大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和35年(く)33号 決定

少年 B(昭一六・一二・二〇生)

主文

原決定を取り消す。

本件を名古屋家庭裁判所に差し戻す。

理由

本件抗告の趣意は、付添人弁護士大矢和徳の差し出した抗告申立書に記載されているとおりであるから、ここにこれを引用するが、その要旨は原決定(没取の部分も含め)には処分の著しい不当があるから取り消さるべきである、というにある。

職権をもつて調査するに、付添人より当裁判所に提出された昭和三十五年十一月十七日付報告書(これに添付された医師衛藤潔作成の死亡診断書を含む。)及び当裁判所がなした外国人死亡照会に対する同年十二月十三日付名古屋市中村区長鈴木幸太郎作成の回答書によれば、本件少年は、本件抗告申立があつた後同年十一月十六日交通事故により死亡したことが認められる。しかうして、少年法に基く少年に対する家庭裁判所の審判権は、当該少年の死亡により消滅するものと解すべきであるから、現在においては、本件少年を名古屋保護観察所の保護観察に付する旨の原決定は、少年法に違反し、本件少年に対し審判権を有しない原裁判所が保護処分をなした違法を冒しているものであり、かかる違法は原決定に影響を及ぼすものであること明らかである。

そうとすれば、抗告人主張の点について判断するまでもなく、本件抗告は理由あるに帰するので、少年法第三十三条第二項前段、少年審判規則第五十条により主文のとおり決定する。

(裁判長判事 小林登一 判事 成田薫 判事 布谷憲治)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例